研修制度の概要

子どものこころ専門医機構

研修制度の概要

1. 研修制度の概要

子どものこころ専門医は、小児科あるいは精神科を基本領域とするサブスペシャルティ専門医として位置づけられています。研修開始は、小児科あるいは精神科専門医研修が修了してからとなり、基本領域専門医研修との重複は認められておりません。
研修は、子どものこころ専門医研修施設群として認定された施設で行います。専攻医はいずれかの研修施設群で研修登録を行い、その研修施設群内の研修施設を行き来しながら研修を進めます。

2.研修開始の要件

子どものこころ専門医研修を開始するためには,研修開始日までに小児科あるいは精神科専門医研修を修了していることが必要です。研修開始時点で、小児科あるいは精神科専門医資格を所持している必要はありませんし、専門医試験に合格しなかったからといって、それまで行った子どものこころ専門医研修が無効となることもありません。しかし、子どものこころ専門医試験の受験資格には「小児科あるいは精神科専門医資格を所持していること」という要件がありますので、子どものこころ専門医試験の受験までには小児科あるいは精神科専門医試験に合格しておかなければなりません。

3.研修修了の要件

子どものこころ専門医研修では「研修施設における1日3時間以上の研修×12回=1単位」とみなし、3年以上10年以内の研修によって36単位以上を取得することを研修修了の要件としています。単位計算の基本的ルールを以下に示します。

《単位計算のルール》

  • ● 1日(3時間以上)×12回の研修を1単位とする
  • ● 1日に認められる研修は1施設のみとする
  • ● 1ヵ月に取得できる単位は1単位までとする
  • ● 1年間に取得できる単位は1単位以上,12単位までとする
  • ● 1施設での研修は1単位以上とする

《単位計算の具体例》

  • ● 1つの施設で週1回(3時間以上)の外来を1年間担当して研修すれば、週1回×月4週×12月=年48回の研修となり、これは4単位に相当する。
  • ● 1日のうち、午前中3時間を施設Aで研修し、午後5時間を施設Bで研修したとしても、1日の研修として認められるのは1施設のみなので、AかBかどちらかの単位しか認められない。
  • ● 1つの施設で週5日の常勤医として勤務しながら研修する場合、週5回×月4週×12月=年240回となり、これは20単位に相当するが、認められるのは年12単位までとなる。
  • ● 施設Aで週3日(月、水、金)、施設Bで週1日(火)研修した場合、施設Aでは週3回×月4週×12月=年144回(12単位)、施設Bでは週1回×月4週×12月=年48回(4単位)で年16単位となるが、認められるのは12単位までなので、施設Bでの研修単位を活かしたければ、施設Aで8単位、施設Bで4単位として申請する。
  • ● 1つの施設で1ヵ月集中的に研修を行った場合、週5日×月4週=20回でこれは計算上1.7単位に相当するが、1ヵ月に取得できる単位は1単位までなので1単位となる。
  • ● 1つの施設で月1回研修すれば、月1回×12月=12回(1単位)となるのでこれは単位として認められるが、2ヵ月に1回で年6回の研修であれば0.5単位相当となり研修としては認められない。

4.研修内容

研修は、①実際の診療、②指導医の診療への陪席、③指定された講習の受講、によって行われます。研修カリキュラムに総論(A)12項目、分野別(B、C、D)18項目が挙げられていますが、総論12項目についてはレベルⅠ,レベルⅡとも評価基準B(専門医研修終了レベル)以上に到達すること,分野別18項目については,レベルⅠは全項目について評価基準B(専門医研修終了レベル)以上,レベルⅡは各専攻医が選択した2領域以上にわたる5項目において評価基準B(専門医研修終了レベル)に到達することが必要です。専攻医は研修開始時に、分野別18項目のうちレベルⅡまで履修する5項目を選択します(選択した項目は研修途中で変更することもできます)。
総論12項目に関しては、研修施設での日常診療を通じた研修で履修するとともに、子どものこころ専門医機構が企画する講座(e-ラーニング)を受講する必要があります。
分野別18項目については、それぞれの項目について必要な経験症例数が定められており、その症例数を満たすことによって履修したとみなします。レベルⅠの到達には、実際の診療だけでなく、指導医の診療への陪席も経験症例として認められ、それでも症例数が不足する場合には、不足分の講習を受講することによって、1講習1症例として計算することができます。レベルⅡへの到達が必要な5項目については、必要な症例数のすべてを実際の診療によって経験することが求められます。

レベルⅠ レベルⅡ
総論12項目
《履修方法》

基幹施設あるいは連携施設Aにおける日常診療、指導医への陪席などを通じてカリキュラムの内容を修得していく

《修了基準》

すべての項目について概ね70~80%以上修得する
(レベルⅠ評価基準B=70~80%の修得)

《履修方法》

基幹施設あるいは連携施設Aにおける日常診療、指導医への陪席などを通じてカリキュラムの内容を修得していく

《修了基準》

すべての項目について概ね50%以上修得する
(レベルⅡ評価基準B=50%の修得)

分野別18項目
《履修方法》

すべての項目について、おもに診療経験を通じてカリキュラムの内容を修得していく

《修了基準》

実際の診療、指導医への陪席、講習受講(1時間の講義=1症例換算)によって必要な症例数をクリアする

《履修方法》

2領域以上にわたる5項目において、自らの診療経験を通じ、カリキュラムの内容を修得していく

《修了基準》

必要な症例数を実際に自ら診療する
(レベルⅡの修了によってレベルⅠは修了したとみなす)

       
        

■履修完了に必要な経験症例数

  • ● レベルⅡまで履修する5項目:実診療経験が下記の症例数を満たす必要がある
  • ● その他の項目:実診療経験+陪席経験+講習受講(1単位=1症例)が下記の症例数を満たす必要がある
  •                                                                                                                                                                                     
    B.小児の心身医学領域に特有の問題
    B-1

    機能的身体症状(不定愁訴)

    10例 

    B-2

    心身症

    10例 

    B-3

    周産期の母子保健

    10例 

    B-4

    慢性疾患児の包括的ケア(思春期・生活習慣病を含む)

    8例 

    B-5

    終末期のケア

    2例 

    C.小児の精神および行動の障害
    C-1

    器質性精神障害
    精神作用物質使用による精神及び行動の障害

    5例 

    C-2

    統合失調症

    2例 

    C-3

    気分障害

    3例 

    C-4

    神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害

    10例 

    C-5

    生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群

    10例 

    C-6

    人格および行動の障害

    3例 

    C-7

    知的障害(精神遅滞)、心理的発達の障害

    10例 

    C-8a

    小児〈児童〉期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害:注意欠如・多動症、素行障害など

    10例 

    C-8b

    小児〈児童〉期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害:情緒障害、チック障害など

    10例 

    D.多様な背景によって生じる問題
    D-1

    不登校・ひきこもり

    10例 

    D–2

    自傷・自殺

    5例 

    D–3

    非行

    5例 

    D–4

    児童虐待

    10例 

    5.研修講習について

    総論については、子どものこころ専門医機構として、専攻医全員を対象とした講習を準備します。子どものこころ専門医として誰もが確実に知っておくべき内容について幅広く講義し、当該講習を受講しないと総論を履修完了したとはみなされません。
    分野別については、ウェブサイト上のe-ラーニングおよび各学会主催の学術集会、研修会等における講演を研修講習として認定します。1時間程度の講義を1単位とし、1単位を1症例として経験症例に加算することができます。
    ただし、講習受講が症例として換算できるのはレベルⅠのみです。

    6.単位取得と研修施設

    各研修施設群には、基幹施設、連携施設A、連携施設Bの3つのタイプの研修施設があります。専攻医は研修施設群内の施設を回り単位を取得しますが、各施設で取得できる単位には次の縛りがあります。

    • ● 基幹施設1施設で36単位すべてを取得することができます。しかし、できるだけ複数の施設で単位取得することを推奨しています。
    • ● 1つの連携施設Aのみで36単位すべてを取得することはできません。基幹施設あるいは他の連携施設Aで1単位以上を取得してください。
    • ● 連携施設Bでの研修で認められる単位は合計6単位までです。2つの連携施設Bで研修すると12単位まで認められるのではなく、複数の連携施設Bで研修したとしても、認められる単位は6単位までとなります。
    • ● 分野別18項目から選択する5項目のうち、1項目は連携施設Bでの研修が認められます。(連携施設Bにおける経験症例をもとに症例報告書を作成することができる)

    7.研修施設における専攻医の勤務形態

    専攻医は、1つの研修施設群に登録したうえで子どものこころ専門医研修を行います。研修施設群内のどの施設を中心に研修を行うかは任意ですが、連携施設Bでの研修には制限がありますので、主たる研修施設は基幹施設または連携施設Aのうちのどれかとなります。専攻医の施設内での勤務形態は常勤か非常勤を問わず、陪席や診療見学だけであれば勤務実態がなくでもかまいません。

    8.診療以外の研修

    実際の診療以外にも、さまざまなテキストに目を通し、教科書的な学習を行うこと、診療上気になる症例にあたったときには、文献検索を行って新たな知識を身につけることなども大切な研修となります。
    また、学会での症例報告、論文発表など、自らの経験をまとめて発信することもよい学習となります。子どものこころ専門医試験受験の要件には、学会発表や論文発表も含まれていますので確認してください。(子どものこころ専門医試験の項を参照)

    9.研修施設群の異動について

    原則として専攻医は1つの研修施設群で研修登録を行い、単位を修得しますが、やむを得ない事情で研修施設群を異動しなければならない場合には、登録している研修施設群の研修統括責任者と異動希望先の研修統括責任者に相談し、中央研修管理委員会に申請のうえ、認められれば異動することができます。その場合、異動前に取得した研修単位は無効にはならず、持ち越すことが可能です。

    10.研修の休止について

    子どものこころ専門医研修は3年~10年という期間が定められていますが、さまざまな事情で研修の継続が難しい場合、研修の休止を申請することができます。休止が認められれば、その期間は研修期間から除かれます。
    研修の休止を希望されるときには、所定の書類をウェブサイトからダウンロードして記載のうえ、証明書とともに事務局に送付してください。承認には中央研修管理委員会の審査が必要で、事情によっては認められない場合もあります。なお、申請書はできるだけ研修休止前に提出してください。諸事情で申請が遅れる場合も、休止開始日から1年以内にお願いします。

    《注意》 妊娠・出産に伴う研修の中断については6ヵ月以内、病気療養の場合は3ヵ月以内であれば休止申請は不要です。中断期間以外で所定の症例経験がなされ、診療能力が目標に達していると、所属する研修施設群の研修管理委員会が認めれば、中断期間を含む3年間での研修修了が認められます。

    《研修休止規定》

    • ① 特別に配慮が必要な事情(海外留学・勤務、妊娠・出産・育児、親族の介護、病気療養、管理業務、災害被災など)があり研修の継続が困難な場合、研修の休止を申請することができる。
    • ② 研修の休止を希望する者は、詳細な理由書および証明書を添えて事務局に申請する。その後、中央研修管理委員会での審議を経て承認されれば休止が認められる。
    • ③ 休止期間は1年単位とする。期間の上限はないが、当初の申請は2年以内とし、その後延長する場合は1年毎に延長願を理由書・証明書とともに提出して承認を受けなければならない。また、研修を再開する場合にも、その旨申請書を提出し、承認を受ける必要がある。
    • ④ 休止期間は研修期間には含まれない。

    研修休止申請に必要な証明書の例(コピー可)

    • ● 海外留学・勤務:留学期間や海外の施設に長期滞在していることを証明する書類
    • ● 妊娠・出産・育児:母子手帳、育児休業証明書等
    • ● 疾病療養・介護休暇…休職届または責任者による証明文書

    研修休止申請書

    申請書等については使用するファイルごとに下記よりダウンロードしてください。